「阪神北」という地域をご存知でしょうか?47都道府県を制覇した自称・日本中毒の私も、恥ずかしながら見落としていた地域です。
この言葉の意味をちょっと説明してみましょう。「阪神」は大阪の「阪」と神戸の「神」の文字をとり、これを“音読み”すると「はんしん」となります。この言葉は一般的に大阪と神戸に挟まれたエリアのことを指します。
兵庫県の県庁所在地である神戸よりも、観光拠点の大阪に近いことから、大阪府の一部と勘違いしている人も多いのでは。
阪神北地域は、宝塚市、伊丹市、猪名川町、川西市、三田市の5エリアで構成されています。今日は猪名川町、川西市、三田市の魅力を探ってみましょう。
猪名川町
猪名川町で隠れた素敵な名所を見つけました。まず、国の登録有形文化財である静思館を訪ねました。
猪名川町の静思館
現在は町営施設となっている旧冨田邸は、1932年に豪商・冨田熊作によって建てられました。往年のノスタルジックな雰囲気が漂い、様々な用途のための興味深い蔵があります。たとえば、天然冷蔵庫の「ひむろ」や、薪や炭、味噌、農具、さらには衣料品用の蔵などです。
昔のキッチンの様子
昔のバスタブ。アニメのワンシーンのようです!
静思館を見学するのに最適な方法のひとつは、丘に登り、邸宅全体の配置、とくに、印象的な茅葺屋根を上から眺めることです。茅葺屋根は非常に手間をかけて建てられています。
小高い丘を3分程登れば、この景色が待っています。
発見できてとても嬉しかった2つ目の名所は、築350年の武家屋敷をレストランにした、古き良き時代の魅力が溢れる「囲炉裏茶屋 里の家」です。
猪名川町の囲炉裏茶屋 里の家
オーナーが、囲炉裏(私が日本の冬で一番好きなもののひとつ!)の横で温かいお茶で私たちを迎えてくれました。ご主人の暖かいおもてなしや囲炉裏の温かい薪、ぼたん鍋(猪肉の鍋)や郷土料理のおもてなしでくつろがせていただきました。
冬の寒い日に、目の前に広がるごちそうを食べながら囲炉裏を囲むことは、何事にも代えられません。
猪肉は、非常に脂身が多そうに見えますが、味にクセがなく最高に美味しかったです。足を運んででも食べたくなる一品です。
「そば」は「うどん」と並んでわが国の伝統的な麺料理で、寿司や天ぷらと同様に代表的な日本料理と言えるでしょう。関西はどちらかと言うと、うどん文化の地ですが、最近の健康ブームからそばが注目を集めているそうです。
猪名川町はそばの名産地なので、「道の駅いながわ」にあるレストランでは、つなぎを使わずそば粉だけで打ち上げる十割そばを味わうことができます。また、そば打ち体験もできる人気の施設なんですよ!
メニューは、ざるそば、おろしそば、とろろそばなどがあります。私は、「肉そば」をいただきました。おいしい出汁と肉がマッチし、打ち立てのつるんとした喉越しのそばは最高でした。
私が食べた「肉そば」。
自動販売機もあり、営業時間外でも誰でも気軽にそば菓子が食べられます。
猪名川町のマスコットキャラクター、猪の「いなぼう」
川西市
次に訪れるのは川西市。こちらも海外からの観光客はほとんど訪れない郊外の町です。
日本一の里山と称されている黒川地区にある旧黒川小学校を訪ねました。
この小学校は、約50年前に過疎化のため休校になり、現在は川西市黒川公民館として活用されています。最も古い校舎は1904年に建設され、1世紀を経た現在も、その勇姿を見ることができ、教室や廊下なども当時のまま残されています。
当時の小学校生活を知ることができる貴重な建物の見学は、とても興味深い体験でした。風情のある木造校舎は、周辺の里山風景に溶け込み、訪れる人にどこか懐かしさを感じさせてくれるはずです。
当時のままの面影を残す旧黒川小学校の廊下
日本の学校の雰囲気を満喫
多田神社もこの界隈の見どころのひとつで、たくさんの物語があります。
川西市の多田神社
多田神社は、平安時代(794-1185)中期の武将である源満仲によって、970年に創建されました。
神社の本殿には、源満仲をはじめ、その曾孫までの武将5人が祀られており、境内では荘厳な雰囲気を感じました。
この血筋を受け継ぐ子孫の中には、鎌倉幕府を開いた源頼朝、室町幕府を開いた足利尊氏、江戸幕府を開いた徳川家康など、日本を自らの支配下に置いた武将たちがいます。
こうしたことから、多田神社は勝運のご利益があるとされており、合格祈願や勝利を願った絵馬が並んでいました。私がお参りした時も、制服を着た高校生らしき女の子が本殿に手を合わせていたのが印象的でした。
幸福のカエルと源満仲の陵墓
また、秋の紅葉が美しい「妙見の森」、春には絶滅危惧種の野生種「エドヒガン」が優雅に咲く「黒川桜の森」なども魅力的です。
三田市
食欲をそそる多くのグルメ体験が期待できる三田市ですが、ひとつ選ぶとすれば、やはり三田牛でしょう。霜降りの牛肉といえば、兵庫県は世界的にとても有名です。永遠の人気を誇る「神戸ビーフ」や「但馬牛」は、すでに食べたことがある人も多いかもしれませんが、地元民が誇りを持って生産する三田牛は、最高の品質にもかかわらず知名度がまだ低いのです。
今回、私はファームトゥテーブル・レストランの「藍屋」へ立ち寄りました。肉屋と牧場をもつ会社が運営するレストランで、最上級品質の三田牛を手頃な価格でいただけます。
「神戸ビーフ」や「但馬牛」にも劣らない肉質で非常においしかったです。
高級牛肉にもかかわらず、お財布に優しいお肉を堪能できる名所を知りました。
私が食べた三田牛ステーキ
最後に、1883年創業の老舗呉服店だった町家をリノベーションし、おしゃれなベーカリーに変身した「any many shop」に立ち寄り、自家製菓子パンを購入しました。
歴史を感じさせる外観のお店ですが、注文スタイルがおもしろかったです。
こちらのお店では、展示のサンプルがすべて本物の菓子パンで、購入の際は、菓子パンの前のトランプカードをレジに持って行き、注文するスタイルで驚きました。
古き良き日本家屋の風情を楽しみながら、みなさんも立ち寄り、自家製菓子パンを購入してみては。
三田市の「any many shop」
ギャラリーのようなペストリーの展示(全部本物です!)
にぎやかで人気の旅行先である大阪や神戸の陰で目立ちませんが、阪神北地域は知る人ぞ知る穴場スポットです。訪れた人にしかわからない素晴らしい宝が隠されていることを私が保証します!
静思館
アクセス:能勢電鉄「日生中央駅」より阪急バス「上野」から徒歩約2分
住所:猪名川町上野字町廻22
TEL:072-766-0013
開館時間:9時30分~16時30分
休館日:月曜日(祝日の場合、その翌日)、年末年始
囲炉裏茶屋 里の家
アクセス:能勢電鉄「日生中央駅」より阪急バス「杉生」から徒歩3分
住所:猪名川町島字内垣内23
TEL:072-769-0275
道の駅いながわ
アクセス:能勢電鉄「日生中央駅」より阪急バス「川床口」徒歩約1分
住所:猪名川町万善字竹添70-1
TEL:072-767-8600
営業時間:9時~17時
定休日:水曜日(祝日の場合は、その翌日)、年末年始
any many shop
アクセス:JR「三田駅」から徒歩約5分
住所:三田市中央町15-24
TEL:072-562-2477
営業時間:10時~17時
定休日:月曜日、火曜日
藍屋
アクセス:JR「相野駅」から徒歩約7分
住所:三田市下相野319-22
TEL:079-568-0052
営業時間:11時~14時および16時30分~20時
定休日:火曜日
黒川公民館
アクセス:能勢電鉄「妙見口駅」より阪急バス「黒川」から徒歩約5分
住所:川西市黒川字谷垣内295
TEL:072-738-0107
開館時間:9時~17時30分
休館日:土日、祝日、年末年始
多田神社
アクセス:能勢電鉄「多田駅」から徒歩約15分、または阪急「川西能勢口駅」より阪急バス「多田神社前」から徒歩約2分
住所:川西市多田院多田所町1-1
TEL:072-793-0001
ライター:チージー URL: www.cheeserland.com